ウシ科ヤギ属のカシミヤ山羊の毛で、刈り取られた毛から産毛(うぶげ)だけを選別したものを指します。中国が主要産出国であり、その他にモンゴル、インド北部、イラン、ヒマラヤ高地一帯周辺(チベット等)の厳しい自然環境の中で放牧に近い形で飼育されています。 過酷な環境下で飼育されているカシミヤ山羊は寒気や乾燥に強い耐久力を持ち、その寒暖の差からくる自然の作用で羊毛と比べると細く艶やかな毛質が形成されます。 また、その毛は繊維構造上、羊毛に比べ平滑で規則正しいスケール(うろこ状の表皮)に覆われているためフェルト化しづらい特徴を持っています。 又、中空構造のため、カシミヤ産毛は軽くて、保温性と吸湿性に富み、非常に細かく、手触りは柔らかく、絹のような光沢と独特なヌメリ感のあるソフトな風合いがあります。反面、着用等でピリング(毛玉)が発生したり、摩耗に対して弱い点があります。
被毛は太くて長いヘアーと細くて短い産毛からなり、五月初旬、防寒用の産毛が皮膚から分離し始めます。これを針金製の熊手の様な道具でスキ取り、産毛(肌毛)だけを分離して使用します。
この頃の短期間が採毛の期間で、遅れるとフケが多く出て、原料価値が下がります。
産毛は、カシミヤ1頭から150g~200gしかとれないため、希少価値が高く極めて高価になります。(セーター1枚にカシミヤ4頭、コートは30頭が必要です。)産毛量が少ないので、カシミヤは繊維の宝石とも言われています。
カシミヤ山羊には、ブラウンカシミヤ・ホワイトカシミヤ、グレーカシミヤの3種類があります。
中でもホワイトカシミヤは脱色の必要がなく、繊維に対して余計なストレスを加えることもないため、カシミヤの中でも特に高値で取引されているようです。
もちろんブラウンやグレーが低品質というわけではありません。なぜなら、カシミヤには”色ごと”に「グレード(等級)」が設定されているからです。
ブラウンやグレーであっても等級が高くなるほど、肌さわりも良く高値で取引されるようになります。
しかし、原料の質はホワイトよりもブラウンの方が繊度も細く、質的には上で、中国の内蒙古産のブラウンカシミヤは世界最高の品質と言われています。
カシミヤ山羊の表面をスキ取ると、チクチクする太いヘアー(粗毛)と産毛・土・等が混ざっています。これを土毛と言い、この土毛から産毛だけを取り出す工程を整毛と言います。
土毛から整毛上がりまでの間に重量が約50%に減量します。
原料市場では、繊維の細さ、繊維長、ヘヤーの混入率により下表のようにランク付けされます。カシミヤ原料の等級は複雑で境目を決めるのが困難です。
ランク | 繊度 | 繊維長 | ヘヤー混率 |
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1級品 | 14ミクロン前後 | 34mm以上(最高で38mm位) | 0.1% |
2級品 | 14~15ミクロン代 | 30mm~34mm | 0.2% |
3級品 | 16ミクロン前後 | 28mm~32mm | 0.3%以下 |
4級品 | 16ミクロン以下 | 30mm以下 | 0.5% |
5級品 | 16~17ミクロン以下 | 28mm以下 | 0.5%以上 |
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
8~9級品 | 17~18ミクロン | 24mm以下 | 1.0%以上 |
・スケールの間隔が広く、1片のスケールが比較的大きいです。
・繊維は細くて均一であり、美しい光沢があります。
・中空構造のため、軽く保温性に優れます。
・ぬめりが有り肌に優しい特有の手触り感があります。
・吸湿性に富み、汗を吸収し発散する作用に優れています。
・羊毛と比較すると繊維は細く、平滑です。